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神戸地方裁判所 昭和50年(行ウ)4号 判決

原告 木下正一

被告 三田市選挙管理委員会

右代表者委員長 喜多三郎

右訴訟代理人弁護士 熊野啓五郎

右指定代理人 南貞夫

同 金子宕雄

主文

一  被告が昭和五〇年一月一七日原告に対してなした異議申出棄却決定のうち、瀬戸口市太、同清に関する部分を取消す。

二  その余の原告の請求は棄却する。

三  訴訟費用は、これを五分し、その一を被告の、その余は原告の各負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が昭和五〇年一月一七日原告に対してなした異議申出棄却決定を取消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は三田市三輪財産区議会議員の選挙人である。ところで三輪財産区の区議会議員選挙に用いる選挙人名簿は、公職選挙法(以下単に法という。)二六八条、地方自治法二九五条、二九六条一項に則って昭和三五年一一月一日公布施行された三田市三輪財産区議会設置条例(三田市条例第三二号。以下単に条例という)によると、三田市の市議会議員選挙に用いる選挙人名簿又はその抄本(関係部分)を用いることになっている(条例五条)。ところで、三輪財産区の区議会議員の選挙権については条例三条により三輪財産区の区域内に住所を有するもので、三田市市議会議員の選挙権を有する者がこれを有するとされているけれども、右にいう三輪財産区の区域とは、大字三輪の区域(以下三輪地区という)であって一定の地番(別紙記載のとおり。以下除外地番という)を除くもの(以下指定区域という)とされている。なお三輪財産区の区議会議員の被選挙権は、右の選挙権を有する者のうち、年令満二五年以上の者がこれを有するとされているのである(条例四条)。

2  従って右区議会議員選挙に関しては選挙人名簿に三田市内に住所を有することの他に、三輪地区内でかつ除外地番ではない場所に住所を有する旨の要件が正確に登録されていなければならず、これを欠くことは法二四条一項の異議申出事由となる。

3  しかるに、別表(一)、(二)、(三)に記載した者らについてはいずれも、被告が昭和四九年九月一日現在(以下基準時という)で同月一〇日に登録を行った(定時登録)三田市市議会議員選挙に用いる選挙人名簿(以下本件名簿という。)に記載されている住所と現実の住所が異っている。

(一) 別表(一)について。

1の奥仲秀夫ほか五名の者は、大正時代の初期又は明治時代から三輪地区内である三輪一三〇七ノ二、及び同一三〇七ノ三に居住し、3の平川發夫ほか三名は数年前から同じく三輪一〇五一番地に居住しているのに、本件名簿には住所として三輪地区外の場所(前者は香下二〇及び六四ノ一、後者は大原一三三〇)が記載されている。なお、基準時の後ではあるが、奥仲秀夫、同みさを、同秀次、同宣子の住所については昭和四九年一一月二七日に、平川發夫ほか三名のそれについては昭和五〇年二月一七日に、それぞれ住民基本台帳の地番修正がなされている。2の瀬戸口市太、同清は既に二〇数年前から住民基本台帳登録地番である三輪一三三〇番地に居住していないのに(現実は大原字上野ヶ原一三一〇ノ七に居住)、未だに本件名簿には三輪一三三〇番地と記載されている。

(二) 別表(二)について

ここに記載した者らは国立療養所兵庫中央病院の職員及びその家族であるが、同病院(その所在地の代表地番は三田市大原一三一四番地)の敷地内に建設されている看護婦寄宿舎等に居住しているところ、同表1の森田久治ほか二名は、昭和四四年六月二日住民基本台帳法に基づき三田市三輪一〇二一番地を住所として届出ているが、さらに昭和四九年四月一日には三輪大道ヶ平一二九四ノ三二番地に建設されている同病院の第六号官舎に転居している。因にいずれの住所も指定区域内にある。同表2の者らは住所を同病院の前記代表地番及びその他の大字大原に属する地番で住民基本台帳に届出ており、選挙人名簿にも同様に登録されているが、実際は指定区域たる三輪字杉谷の地域内に住所を有するものとして登録されるべきである。右の者らが住所地番を誤って届出た原因は、同病院の建物敷地が旧大原村と三輪村にまたがって存在し、同病院の前身である傷痍軍人兵庫療養所の建設工事中に両者の境界線が不明確になったと言われており、その関係で三輪字杉谷の区域内に建設されている官舎や寄宿舎に居住する職員、看護婦等が住所地番を前記代表地番の大原一三一四番地と届出ているためである。右病院敷地は数十ヘクタールに及ぶ広大な区域であり、その区域内には極めて数多くの土地地番が存在するから代表地番として前記大原一三一四番地が選ばれているのである。大原地区と三輪地区の境界の設定については、三田市市道路線地図等によることが合理的であり、右地図によると、県道三田籠坊線と市道六〇号線(旧来から大原地区と三輪地区の境界とされていた)の合流点となっている上野郵便局と国立兵庫療養所前の三角形の土地内に存在する建物及びその範囲に含まれる新築鉄筋四階建寄宿舎の内中央の一棟内に入居する者は、三輪地区に含まれることになる。なお、右表の外にも、三輪字杉谷所在の看護婦寄宿舎、同大道ヶ平、吹上、上野等に所在する官舎内居住者の相当多数が住民基本台帳に住所を誤って大原地区として届出ており、又、杉谷に新築された鉄筋四階建看護婦寮(二四室)三棟の内、三輪地区に属する土地上に存する棟に住む住民が兵庫中央病院の代表地番である大原一三一四番地その他の大原地区に属する地番で住民基本台帳に届出ている。本件名簿上の住所は、住民基本台帳上の住所をそのまま移記しているわけであって、前者には、後者に存する誤りと同一の誤りが存在する。

(三) 別表(三)について

1に記載の者らは三輪地区外の大字三田の住民であり、従って三輪地区の選挙人を投票区とする第三投票区の選挙人名簿より抹消して大字三田の当該投票区(三田第一九投票区)に編成すべきである。

なお、第三投票区には三輪地区外である高次も含まれているが、それは法一七条の告示を経た上で適法になされているのであり、本件の如く誤って第三投票区に編入されている場合とは同じでない。

4  そこで原告は本件名簿に誤りがあると認め、その縦覧期間内に被告に対し法二四条一項に定める異議の申出を行った。しかるに被告は昭和五〇年一月一七日、棄却決定をなし、原告は同年一月二一日に同年一月二〇日付三選管第一七号通知書をもって右棄却決定の送達を受けた。

5  しかしながら、本件名簿には前記の如く誤りがあり、右決定には不服がある。特に別表記載の者らのうち、現実には指定区域内に住所を有するが、本件名簿には指定区域外にある地番が住所として登録されている者の財産区区議会議員選挙についての選挙権が右棄却決定によって奪われることになり、憲法一四条、一五条、九三条二項に違反するものである。なお、右決定が、本件名簿の被登録資格は、基準時に指定区域内に住所を有する者で、かつ三ヵ月以上引き続きその旨住民基本台帳に記載されている者に限られるとの解釈の下になされたのなら、右解釈そのものが右各憲法条文に違反するものである。けだし、そもそも除外地番の選定に何らの合理性がないのみでなく、また住民基本台帳への住所の届出を全く怠っている住民ならば格別、届出をなしたけれども自己の住所を誤って届出た住民の選挙権をほしいままに奪うこととなるからである。市町村長は、住民基本台帳の正確化に努めなければならないこととされており(住民基本台帳法、以下台帳法という、三条一項)、また台帳法一五条には、「選挙人名簿の登録は、住民基本台帳に記録されている者で選挙権を有するものについて行うものとする」とあって、「三ヵ月以上云々」なる要件の記載がないことに留意すべきである。

また、法二四条一項の異議申出事由はいわゆる誤載、脱漏だけではなく一般に「選挙人名簿の登録に関し不服ある場合」例えば単に住所地番が異っているような場合も含まれると解すべきである。

6  よって原告は被告に対し、右異議決定の取消を求めるものである。

二  請求原因に対する被告の認否及び主張

1  1及び4の事実は認める。

2  ところで、法二四条一項の異議事由は選挙人名簿に存する誤載、脱漏に限定される。それは、同条二項後段において、「異議の申出を正当であると決定したときは、その異議の申出に係る者を直ちに選挙人名簿に登録し、又は選挙人名簿から抹消し……なければならない」と規定していることからも明らかである。そして、選挙人名簿に登録されるためには、引続き三ヵ月以上指定区域の住民として住民基本台帳に登録されていることが要件であるから(法二一条一項、二六八条、台帳法一五条。台帳法一五条に、引続き三ヵ月以上云々なる要件の記載を欠くのは、同条が原則のみを定めた規定であるからにほかならない)、たとえ指定区域内に三ヵ月以上住所を有するものであっても、住民基本台帳にその旨登録されていない限り、選挙人名簿に登録されないのは当然であるから、これに登録のないことをもって、選挙人名簿に関する異議事由とすることはできない。これに対し、住民基本台帳に住民として登録されていることのほか、少くとも基準時において現実に住所を有していることが選挙人たる要件、すなわち選挙人名簿への正当な登録の要件とされているから、住民基本台帳に登録されているが、現実に指定区域内に住所を有しないことは異議事由となるのである。なお、指定区域内での転居により、選挙人名簿記載の住所と現実の住所が異ったような場合の是正に関しては法二九条三項、二七条二項に則って処理されるべきである。

3  そこで請求原因3について認否と意見を述べる。

(一) 別表(一)について

1の奥仲秀夫及び同みさを、同秀次、同宣子については、基準時において住民基本台帳記載の住所は三輪地区外である香下二〇であるから、現実の住所が指定区域内であっても法二四条一項の異議申出事由にあたらない。奥仲勇、同清美については、原告主張のとおり、住民基本台帳記載の住所が昭和四八年三月二六日、香下六四の一から三輪一三〇七の三に変更されているが、本件名簿にもそのとおりに登録されており、登録は正当である。

2の瀬戸口市太、同清は住民基本台帳記載の住所は三輪一三三〇であって指定区域内の如くみえるが現実の住所は大原一三一〇の七にあるので、原告の異議申出には理由があり、そのとおりに変更すべきである。

3の平川發夫ほか三名は、住民基本台帳記載住所は三輪地区外の大原一三三〇であるから、現実の住所が指定区域内であっても異議申出事由とならない。

(二) 別表(二)について

1の森田久治ほか二名は、住民基本台帳記載住所は指定区域内の三輪一〇二一であるが、昭和四七年一一月現在は除外地番の三輪一〇〇三の三に所在する兵庫中央病院宿舎第一二号に入居していた。ところが右三名はさらに昭和四九年四月一日同病院宿舎第六号に転居したが、これは指定区域内の三輪一二九四の三二に所在している。そして基準時である同年九月一日においてもそれは変更がないから、これは名簿の脱漏、誤載にあたらず異議申出事由とはならないが、法二七条二項により三輪一二九四の三二に訂正すべきものである。

2の江川常男ほか一七名は、住民基本台帳記載住所は三輪地区外の大原であるから、現実の住所が指定区域内でも異議申出事由にならない。

さらに兵庫中央病院の看護婦寄宿舎、寮、官舎等に居住する数十名のものは台帳記載住所は大原だから右と同じである。

(三) 別表(三)について

1のうち、住民基本台帳記載住所は岡部優、同玉枝は三田市四七三八の二、細川均、同好子は同四七三八の五、沼野哲旨は同四七三八の一となっており、いずれも三輪地区外であることが明らかである。しかし第三投票区には、地にも三輪地区外のものを多数含んでおり、かかる投票区の編成は違法でない。

2の者らは住所が住民基本台帳に三輪六六八と記載されており、指定区域内にあることとなる。

第三証拠≪省略≫

理由

一  請求原因1、4は、当事者間に争いがない。

二  ところで財産区の選挙人は、選挙人名簿(選挙人名簿は、財産区の選挙のみならず、公職選挙法所定の各選挙を通じて一の名簿であり((法一九条一項))、ただ財産区の選挙を行なう場合において必要があるときは、右名簿の関係部分の抄本を用いることができる((法一九条三項、条例五条))に留る)の登録に関し不服があるときは、縦覧期間内に文書で、右名簿を調製、保管する選挙管理委員会に対し異議を申し出ることができる(法二六八条、二四条一項)。ところで法二四条一項は、単に「選挙人名簿の登録に関し不服があるときは」と記載しているけれども、異議申出の事由は、選挙人名簿の登録に関するすべての瑕疵ではなく、誤載、すなわち選挙人でない者を登録したこと及び脱漏、すなわち、選挙人である者を登録しなかったことに限られるものと解すべきである。けだし、同条二項に、異議申出に対応する選挙管理委員会の処理の方法として「その異議の申出を正当であると決定したときは、その異議の申出に係る者を直ちに選挙人名簿に登録し、又は選挙人名簿から抹消し……なければならない」とのみ記載し、誤載の抹消または脱漏の登録を除くその余の訂正等については触れるところがないのであって、かつ選挙人に与える異議申出権の異議事由を右のような重要な事項にのみ限定することは、民主主義と行政の安定、能率の調和の観点からして合目的々であると解し得るからである。因に誤載、脱漏を含む選挙人名簿の記載の瑕疵一般の是正について、法二九条三項は、「選挙人は選挙人名簿に脱漏、誤載又は誤記があると認めるときは……選挙管理委員会に選挙人名簿の修正に関し、調査の請求をすることができる」として、法二四条一項の異議申出という方法とは別に、縦覧期間内に文書でという制約なしに、是正の端緒を与えることができる方法を用意し、また法二六八条、二七条一、二項は、「選挙管理委員会は、選挙人名簿に登録されている者が選挙権を失ったこと又は指定区域内に住所を有しなくなったことを知った場合には、直ちに選挙人名簿にその旨の表示をしなければならず、また選挙人名簿に登録されている者の記載内容に変更があったこと又は誤りがあることを知った場合には、直ちにその記載の修正又は訂正をしなければならない」という趣旨の瑕疵是正方法を用意しているのである。

ところで、選挙人名簿はカード式とし、これに選挙人の氏名、住所、性別及び生年月日等を記載しなければならないとされている(法二〇条一、二項)のであるが、選挙人名簿の登録は、当該市町村の区域内に住所を有する年令満二〇年以上の日本国民で、かつ禁治産者である等所定の欠格事由(法一一条一、二項)を有しない者であって、しかも当該市町村の区域内に住所を有することが引き続き三ヵ月以上住民基本台帳に記録されている者について行なう(法二一条一項)とされているのである。このことを三輪財産区の区議会議員選挙に即して考えると、指定区域内に住所を有する年令満二〇年以上の日本国民で、かつ禁治産者である等所定の欠格事由を有しない者であって、しかも指定区域内に住所を有することが引き続き三ヵ月以上住民基本台帳に記録されている者が、選挙人としての被登録資格を有すると解するのが相当であって、かような被登録資格を有しない者につきあたかも被登録資格を有するかの如き記載が選挙人名簿になされていることが誤載であり、かような被登録資格を有する者につき全く登録がなされていないか又は登録がなされていてもかような被登録資格を有しないかの如き記載がなされていることが脱漏であって、いずれも法二六八条、二四条一項の異議申出の事由となるものと解するのが相当である。

三  原告は、条例に掲記された除外地番には、その選定につき何らの合理性もないから、右条例に依拠して調製された本件名簿は、憲法所定の選挙制度における法の下の平等の要請に牴触する違憲のものである旨主張するけれども、除外地番の選定の非合理性、不平等性が明白である場合ならば格別、そうでない限り、被告としては条例に依拠して本件名簿を調製すべきことはもとより当然であって、本件名簿が違憲とされるいわれはない。そうして本件除外地番の選定について非合理性、不平等性が明白であるとは認められない。また原告は、指定区域内に住所を有することが引き続き三ヵ月以上住民基本台帳に記録されている者が、選挙人として選挙人名簿に登録される資格を有するという制度(因に台帳法一五条には、原告の指摘するように、「選挙人名簿の登録は、住民基本台帳に記録されている者で選挙権を有するものについて行なうものとする」とあって「三ヵ月以上云々」の要件の記載を欠くが、右は、同条が原則を定めた条文であるに留まるからにほかならず、「三ヵ月以上云々」の要件を不要とする趣旨ではない)ないし解釈の違憲をいうが、右は住民基本台帳と選挙人名簿とを関係づけようとする立法政策に基づく制度であって、その政策に非合理性、不平等性が明白であれば格別、さような事実は認められないから、右制度に則る本件名簿が違憲とされるいわれはない。

四  以上の検討に基づいて原告が本件名簿につき申出た異議の当否について個々に判断する。

1  別表(一)

1の奥仲秀夫、同みさを、同秀次、同宣子については、基準時における住民基本台帳上の住所が香下二〇であることは当事者間に争いがないから、同人らを三輪財産区の区議会議員の選挙人たる資格を有する者として本件名簿に登録すべきではなかったのであり、原告の異議申出は事由がないことになる。奥仲勇、同清美については≪証拠省略≫によると原告が本件名簿に登録すべきであると主張するとおりの住所(三輪一三〇七の三)が右名簿に記載されていることが窺えるから異議申出はその対象を欠くこととなり、もとより理由がない。

2の瀬戸口市太、同清については、基準時における住民基本台帳上の住所は指定区域内の三輪一三三〇であるが、現実には大原字上野ヶ原一三一〇の七に居住していたことは当事者間に争いがないから、三田市市議会議員選挙の選挙人としてならば格別、三輪財産区区議会議員選挙の選挙人としては被登録資格を欠くこととなるから、被告はこの事実を明らかにするため、本件名簿上の住所の記載を現実の住所に訂正するか、又はこの間の事情を明らかにする表示をなすべきであって、原告の異議申出は理由がある。

3の平川發夫ほか三名については、基準時における住民基本台帳記載住所が三輪地区外の大原一三三〇であることは当事者間に争いがないから、同人らは被登録資格を欠くので異議は理由がない。

2  別表(二)

1の森田久治ほか二名の基準時における住民基本台帳記載の住所が指定区域内の三輪一〇二一であること及び現実の住所が右とは異るけれども同じく指定区域内である三輪大道ヶ平一二九四の三二であったことは、いずれも当事者間に争いがなく、基準時に先立つ三ヵ月間の住民基本台帳上の住所が基準時におけるそれと同一であったことは≪証拠省略≫によって認めることができる。さすれば同人らは結局被登録資格を有していることになるから異議は理由がない。もっとも被告は法二七条二項に則り、本件名簿上の住所を現実の住所に訂正すべきである。

次に2の江川常男ほか一七名の住民基本台帳記載住所が三輪地区外の大原であることは当事者間に争いがないから同人らは被登録資格を欠き、異議は理由がない。さらに、その他の兵庫中央病院の看護婦寄宿舎、寮、官舎等に居住する者が大原区に属する地番で住民基本台帳に届出ていることは原告の自認するところであるから右と同じである。

3  別表(三)

1について≪証拠省略≫によると、基準時における岡部優、同玉枝の住民基本台帳上の住所は三田市四七三八の二、細川均、同好子のそれは同四七三八の五、沼野哲旨のそれは同四七三八の一となっていることが認められ、いずれも三輪地区外であるから同人らは被登録資格を欠き、これに副う記載のある本件名簿は正当であって、異議は理由がない。さらに原告は投票区の誤りを主張するが、前述のとおり法二四条一項の異議は脱漏、誤載に限定されると解すべきであり投票区の編成の当否は異議事由にならない。

2の者らの基準時及びこれに先立つ三ヵ月間の住民基本台帳上の住所が三輪六六八(指定区域内)であることは、≪証拠省略≫によって明らかであり、他に同人らの被登録資格の欠缺については主張立証がないから、異議は失当である。

五  以上のとおり、原告の異議申出のうち、瀬戸口市太、同清の分については理由があり、被告がした棄却決定は不当であるから、この取消を求める原告の請求を認容し、その余の分については異議申出は理由がなく、結局被告がした棄却決定は正当であったことになるから原告の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 乾達彦 裁判官 武田多喜子 赤西芳文)

〈以下省略〉

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